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調査隊事務局からの報告
今日皆様にご報告するお話のポイントは次の通りです。
1.第15ステージまで積み重ねてきた皆様の調査データによると
堀川の水質は、木曽川導水が停止した平成22年3月以降、いったん悪化
しましたが、その後ゆるやかに改善・あるいは現状維持を続け、第15ステージも
その傾向は続いていることがわかった。
2.第15ステージのおおきな特徴は気象条件にありました。
今年4月から6月にかけての第15ステージは、平年と比べて
日照時間が長かった、
降水量が少なかった
気温が高かった、という気象条件が大きな特徴がありました。
その結果は、「堀川の色」に顕著に現れました。
それが皆さんの調査報告にはっきりと示されています。
4月には、ちょうどフラワーフェスティバルのころ、堀川の色が赤茶色になるほどの
赤潮が発生しました。
またその他の期間(特に5月〜6月)は、全体的に淡い色、つまり白っぽく濁った状態が
多く見られました。
またヘドロの巻き上げで、真っ黒になる様子も見られました。
今日は、その中で、堀川の色が白っぽく濁るメカニズムを再現するため、
実験を用意しましたので、まずそれから始めたいと思います。
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皆さんのお手元に、昨日新堀川で汲んできた水をまわします。
このペットボトルのふたをあけて、においを体感してみてください。
この水自体は、実験の効果をよりはっきりさせるため、新堀川の
舞鶴橋付近で汲んできましたが、堀川でも基本的に同じにおいが
するものです。
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この堀川や新堀川で特徴的なにおいのもとは、硫化水素です。
いわゆる、「卵の腐ったにおい」と言われているにおいです。
卵の場合でいうと、卵のタンパク質は、メチオニンやシスティンといった
イオウアミノ酸が豊富です。これが分解すると硫黄分が硫化水素として
放出されます。
この硫化水素臭が、堀川や新堀川の悪臭のもとになっています。
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硫化水素のにおいがするときは、左記のようなときです。
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この硫化水素などの硫化物は、酸素と反応すると白く濁ります。
今日は、硫化水素臭のする堀川(新堀川)の水が、実際に酸素と反応して
白く濁るかどうかを、皆さんと一緒に実験したいと思います。
なお、スライドの写真は、事務局が事前にためしに実験してみた時の写真です。
ペットボトルにいれた堀川の水を、ふたをしてシャカシャカと振って、酸素と
混ぜるようにして約2時間放置したところ、このように白く濁るのを確認しました。
堀川の水が酸素と反応すると白く濁る、ということが証明されれば
堀川では、何らかのメカニズムによって川の水が酸素と反応し、
その結果、堀川の水が白く濁って見える、ということが証明できることになります。
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ちょっとわかりにくいかもしれませんが、事務局で考えている
堀川白濁のメカニズムの仮説をご説明します。
まず雨が降ると下水(家庭排水など)の流入によって堀川に
有機物がはいりこみます。
そうすると好気性の微生物が酸素を消費しながら有機物の分解を進めます。
その結果として堀川の水は酸素が少ない状態になります。
すると今度は、酸素が少ない環境を好む(嫌気性の)硫酸還元細菌が
働き始めます。選手交代とでもいうのでしょうか。
ところで、堀川には海水が遡上してきますが、この海水には、硫酸イオンが
ふくまれています。
硫酸イオンはS(イオウ)と酸素(O)が結合していますが、硫酸還元菌は、
硫酸イオンから酸素を奪うため、結果として硫化水素などが発生します。
この硫化水素が、先ほど体感していただいた温泉のような卵の腐ったような
においのする物質です。
この段階で、堀川には卵の腐ったようなにおいがするはずです。
ちょうど最初のペットボトルの状態です。
次に、この硫化物が撹拌されて酸素と結合すると、S(硫黄)がコロイド状の
粒子状硫黄になることがあり、それが白っぽく濁る原因だと事務局では考えています。
ちょうどペットボトルを振ってかきまぜて、酸素と結合をはかった状態です。
堀川では、潮の干満によって水が大きく動きますので、このときに
こうした撹拌が起こるのではないかと思われます。
以上が、現時点で事務局が考えている堀川白濁メカニズムの仮説です。
今日の実験は、左のスライドで青い点線の丸印でかこった部分の過程を
再現してみようとするものです。
先日、事務局が前もってためしに同じ実験をしてみたところ、堀川の水は
ひとつ前のスライドのように見事に白濁しました。
今日、皆さんの前でもういちど再現できるといいなと考えている次第です。
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もうひとつ、本日は、堀川のヘドロはなぜ黒いのか?ということを
考えてみたいと思います。
事務局で考えている仮説は、左のスライドのように、ヘドロの中の
硫化物が、鉄分と反応して、硫化鉄になるからだと考えています。
硫化鉄の色は黒色であり、これが堀川のヘドロが黒い理由だと
考えています。
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そこで今日は、堀川で採取したヘドロを持ってきました。
このヘドロの臭いを直接ご自身でかいでみてください。
ヘドロの臭いは、いろいろな臭いの混ざった複合臭ですが
少し鉄のようなにおいを感じる時がありますので、ぜひ
体験してみてください。
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左のスライドは、事務局が考えている、堀川のヘドロが黒くなる過程の
一例を示したものです。
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さてそれでは、第15ステージの、皆さんが実施してくださった
市民による水質調査の結果についてご説明させていただきます。
今日は、限られた時間の中で盛りだくさんの内容になっていますので、
ポイントを絞ってご説明したいと思います。
まず最初に、第15ステージまでのこの7年半を振り返りながら、
これまでわかってきたことを確認します。
次に、第15ステージで顕著に現れた特徴などから、特に堀川の色や
においの発生メカニズムについての仮説をたて、検証してゆきたいと
思います。
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まず、3ページをご覧ください。
今から2年半前に、皆さんで確認し、そしてこの調査隊会議で毎回確認している、
私たち調査隊が果たしている役割を今回も確認したいと思います。
私たち調査隊の役割は
1.堀川にはまだまだ時間をかけて調査を続けなければわからないことがあります。
だから私たちは、堀川の調査を継続し、堀川の実態解明、汚濁の原因を
データで特定する必要があります。
それによって、対策をたて、処方箋を描き、官民が力をあわせて、堀川の
浄化、再生をめざし、それぞれができることを継続してゆきます。
2.私たち市民としてできることがあります。
それは、木曽川導水の復活をめざし、堀川を愛する人の輪をさらに広げること
木曽川、長良川、揖斐川など流域の人たちと市民レベルの交流を広げること
雨の日の生活排水にきをつける運動など、家庭排水からの汚濁負荷を
削減してゆくこと。
私たち堀川1000人調査隊はこうした役割を強く意識して活動を続けていることを
あらためて皆さんと共有したいと思います。
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次に、9ページをご覧ください。
皆さんの調査報告の累計が、6月末までで、3,513件に達しました。
最近では、一年に約400件のデータをどんどん蓄積しています。
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10ページのグラフをみていただくとわかりますが、コンスタントに
調査件数を重ねている。
この息の長い、地道で、大規模な市民調査活動というのは、
おそらく世界でも類を見ないのではないかと思います。
このデータの蓄積で、今までよくわかっていなかった堀川の現状や、
堀川の水の汚れのメカニズムに私たちは大きく肉迫しています。
私たち堀川1000人調査隊は、みんなの力で、ものすごいことを
続けている、という自負と誇りを持ってよいのではないでしょうか。
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さて、この15ステージの大きな特徴は、気象条件にあります。
今年の夏が異常気象であったために、今ではイメージしにくいかも
しれませんが、11ページをみてください。
今年の4月〜6月は、まず気温、平年の値より1℃以上高い状況でした。
特に6月は1.7℃高かったんです。
降水量ですが、平年より50o程度少なかった。
特に6月の降水量は平年の35%でした。
日照時間、4〜6月の日照時間は、平年よりも50時間程度長く、
特に5月は平年値の137%でした。 |
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このことが、16ページのコラムにまとめてありますので、しるしをつけておいて
ぜひあとでゆっくり読んでみてください。
今日の報告は、このページのお話が中心テーマになっています。
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18ページをごらんください。
猿投橋より下流〜大瀬子橋までの、水の汚れの印象をグラフにしたものです。
平成19年4月から3年間の木曽川導水中に、堀川の水は改善傾向にありましたが
導水停止でいったん悪化しました。
しかし、その後は徐々にではありますが、改善傾向にあるように見えます。
そのグラフの上に、名古屋市の施策がどのように講じられてきたかが
記入してありますが、特に堀川右岸雨水滞水池の活用がはじまったことと
堀川の水が改善傾向に向かっていることに、相関関係があるのではないかと
事務局では考えています。
事務局注
守山水処理センターの下水再生水の活用は、改良工事(平成26年4月〜10月)
のため、第15ステージは停止していました。
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19ページの図は、色をつけてみたものです。
ちょっとわかりづらいかもしれませんが、横軸に、ご自分が調査している
たとえば納屋橋だったら、朝日橋〜松重橋のところから、黒い点線を
ずっと右にたどってゆくと、時系列的な変化が色でわかります。
第7ステージあたりで山が一番高くなって、それから徐々に低くなっている
感じがわかるでしょうか。
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20ページは、春の4〜6月だけを抜き出して、区間別にグラフで
ならべたものです。
松重橋より上流では、導水停止でいったん悪くなった堀川の印象が、
少しずつ改善しているのがみてとれます。
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25ページをご覧ください。
透視度について同じようにグラフをならべたものです。
導水停止後いったん悪化した透視度が、やや改善あるいは
維持(横ばい)傾向にあります。
ピンク色が春、水色が秋ですが、秋は、私たちの許容範囲である
70cmを上回っていますが、春は、60cm弱と、許容範囲を下回った
状態が続いています。
しかし決して悪化傾向にあるわけではありません。
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26ページは、それを色でみたものです。 |
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27ページは、春だけを抜き出して、区間別に並べてたものですが、
先ほどの水の汚れの印象と同じく、松重橋より上流の区間では
少しずつ改善に向かっている様子がみてとれます。
これも、名古屋市の合流式下水道改善の策がきいているからでは
ないかと事務局では考えています。
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30ページをご覧ください。
CODについてみたものです。
導水停止後、しばらくはそんなに悪くなっていない、維持傾向に
ありましたが、去年、今年と春は悪化傾向にあるようです。
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31ページは色でみたものです。
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32ページは区間別に春だけ抜き出してならべたものです。
猿投橋〜城北橋の上流部では改善傾向にみえますが、
城北橋から朝日橋、朝日橋から松重橋、そして松重橋から大瀬子橋、
いずれも悪化傾向にあるようにみえます。
これについては、なぜなのか、という点について、まだこれだけのデータでは
説明ができないですね。
これから先の調査を続けることによって、いつか見えてくる日がくるのでは
ないかと思います。
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34ページは、あわについてです。
導水停止後、やや悪化したのですが、これも改善、または維持傾向に
あります。
これについても、合流式下水道の改善効果(汚濁負荷流入軽減)に要因があると
事務局では考えています。
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35ページは区間別にわけたものです。
城北橋から朝日橋で悪化しているようにみえますが、
他の区間では改善しているようにみてとれます。
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38ページをごらんください。
においの状況についてもあわと同じように改善・維持の傾向にあるように
みられます。
これについても合流式下水道の改善にその要因があるように考えています。
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40ページで区間別に並べてみると、改善傾向はより鮮明にみえます。
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ちなみに39ページに戻ってみてください。
皆さんの報告ではドブの臭いとヘドロの臭いが約8割をしめています。
しかしながら、このドブのにおいとかヘドロの臭いをはっきり嗅ぎ分けられる人は
なかなか少ないのではないかと思います。
そこで、今日は堀川のヘドロをもってきました。
このあと休憩時間に、堀川のヘドロのにおいを体験してみてください。
ドブのにおいというのは、おそらくゴミのようなにおい、下水のようなにおいが
混ざった、いわく言い難いにおいをイメージしている方が多いと思いますが、
ヘドロのにおいをはっきりと識別できると、消去法でこれはヘドロではなく、
ドブのにおいだとか、両方が混じったにおいだとかが、わかるようになると思います。
ちなみに、ヘドロの色について、ヘドロはなぜ黒いのか、というのは、先ほど
スライドでお話ししたように、硫化物と鉄分が反応して硫化鉄になっているからだと
考えています。
実際にヘドロにさわってみると、かなっけを感じるにおいに気が付く人もあるかと
思います。ぜひためしてみてください。
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さて、この15ステージのもっとも大きな特徴があらわれたのが、色です。
43ページをご覧ください。
今年の4〜6月の堀川では、7番、8番、12番の明るい灰色がかった色が
数多く出現したのが大きな特徴です。
これは、一番最初にご説明した気象条件、すなわち平年と比べて、
気温が高めであったこと、降水量が少なく日照時間が長かったことが
関係しているのではないかと事務局では考えています。
また、4月に非常に目立つ赤潮が発生しましたので、14番の褐色が
出現したという報告も多くありました。
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これを表にしたのが45ページです。
7番の黄灰色、8番の淡い灰黄緑色、12番の淡い黄灰色が
昨年と比べて大きく増えていることがわかるかと思います。
おととしと比べても、8番の淡い灰黄緑色と12番の淡い黄灰色が
大きく増えていることがわかるかと思います。
堀川の水がなぜ白っぽく濁るのか、これをこのあと考えていきたいと
思います。
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46ページは、かわせみ調査隊がずっと作成している錦橋での
写真カレンダーを抜粋したものです。
毎日お昼休みに取り続けた写真をカレンダーにしたものです。
46ページは今年4月の写真です。
4月の15日から18日まで、錦橋のところで堀川が真っ赤になるほどの
赤潮になっている様子がよくわかると思います。
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次に、47ページと48ページをごらんください。
47ページは5月のカレンダー、48ページは6月のカレンダーです。
全体的に淡い白っぽい色が今年は目立っていることがわかると
思います。
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そこでまず赤潮についてみていきたいと思います。
52ページをごらんください。
皆さんの報告と事務局の現地確認で、赤潮は名古屋港の
ガーデンふ頭付近、堀川口防潮水門、大瀬子橋付近から
上流に向かって小塩橋あたりまで、褐色になっていたことが
確認されています。
これより上流にも赤潮が広がっていたかもしれませんが、
調査データとしては確認がとれていません。
事務局で問い合わせたのですが、この赤潮は、名古屋市
環境科学調査センターで調査したところ、植物プランクトンの一種で、
「クリプトモナス」というものだったそうで、このプランクトンが異常に
増加していたことがわかりました。
この植物プランクトンは、海水、淡水を問わずいろいろな水域で
きわめて普通にみられるものだそうで、事務局が堀川の赤潮を採水して
顕微鏡でみた写真が52ページにありますが、回転しながら動き回る様子
の写真が掲載してあります。
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この赤潮が発生した期間はその上の51ページでわかるように、
大潮の期間で、海水を上流に向かって押し上げる力が強い期間に
あたります。
ですからひょっとするとこの堀川の赤潮は、名古屋港にいた赤潮が、
上げ潮に押し上げられて堀川に遡上したものだったかもしれません。
でもそうではないかもしれません。
といいますのは、環境科学調査センターの調査データを取り寄せて
みたところ、名古屋港の4月16日のCODの値は、ふだんとあまり
かわらない18だったそうです。
しかし、堀川・小塩橋のBODは27もあったそうで、ふだんこのあたりの
BODは5〜7くらいなので、少なくとも小塩橋付近ではBODが非常に高い、
つまり有機物が非常に多い状態でした。
ですから今回の堀川の赤潮は、名古屋港の赤潮が遡上したというより、
もともと堀川に生息していた植物プランクトンが何らかの原因で異常増殖
したのではないかとも考えられます。
これだけのデータでは、海に原因があったのか、堀川自身に原因が
あったのか、真相は今のところよくわからないとしか言えません。
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53ページをあらためてご覧いただくと、堀川のいたるところで赤潮が、
それもかなり大量の赤潮が発生していたことがよくわかると思います。
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もうひとつ興味深いデータが54ページです。
堀川で採水した水をかきまぜてそっとしておき、斜め上から強い光をあてると、
5分後くらいから光の方に向かってプランクトンが集まり始めました。
下の段の写真で、3時間くらいした経過後、それを暗室にいれて約1時間たつと、
プランクトンは全体に広がってゆきました。
光とプランクトンの関係が記録されており、これはどういうことなんだろうとか、
たいへん興味深いものになっています。
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55ページをご覧ください。
赤潮の色、酸欠状態・青潮状態の白濁した色、そしてもうひとつの色
として、「黒」がクローズアップされました。
実は、堀川の色が黒すぎる!という報告を5月13日に鯱城・堀川と生活を
考える会の方からいただきました。
レポートには、前日の雨でヘドロが撹拌されたのか、においも堀川独特の
卵が腐ったようでした、と書かれていました。
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さっそく翌日に事務局で現地確認をしました。
それが56ページの報告です。
5月14日、11時から17時にかけて大潮の干潮〜上げ潮にかかる
時間帯に、錦橋から下流に向かって名古屋港まで堀川の様子を
確認しました。
その結果、錦橋から熱田区の旗屋橋付近までは灰緑色、
淡灰黄緑色で、錦橋から天王崎橋の間では、ヘドロが巻き上げて
水際にヘドロが露出している様子が確認できました。
もうひとつの興味深いデータが56ページ下の錦橋で撮影した
3枚の写真です。
一番左の5月12日は雨の降る前日、真ん中は雨が降った当日、
右側はその翌日の写真です。
雨の降った翌日は、雨の降った当日よりもやや白っぽい、
淡い色になっているのがよくわかります。
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ちょっと飛びますが、59ページをご覧ください。
実は、堀川では、雨のふったあとに色が白っぽく変わってゆく様子が
しばしば見られるのがわかります。
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このメカニズムを説明しようとしたのが、58ページの図です。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、事務局で考えている
堀川白濁のメカニズムの仮説です。
ゆっくり説明します。
まず雨が降ると下水(家庭排水など)の流入によって堀川に
有機物がはいりこみます。
そうすると好気性の微生物が酸素を消費しながら有機物の分解を
進めます。
その結果として堀川の水は酸素が少ない状態になります。
今度は、選手交代して、酸素が少ない環境を好む嫌気性の微生物、
硫酸還元細菌が働き始めます。
堀川には海水が遡上してきますが、この海水には、硫酸イオンが
ふくまれています。
硫酸イオンはS(イオウ)と酸素(O)が結合していますが、硫酸還元菌は、
硫酸イオンから酸素を奪うため、結果として硫化水素(H2S)などが発生
します。
この硫化水素が、先ほど体感していただいた温泉のような卵の腐ったような
においのする物質です。
この段階で、堀川には卵の腐ったようなにおいがするはずです。
ちょうど今日の実験で体感していただいた、最初のペットボトルの
状態です。
次に、この硫化物が撹拌されて酸素と結合すると、S(硫黄)が
コロイド状の粒子状硫黄になることがあり、それが白っぽく濁る原因
だと考えらています。
ちょうどペットボトルを振ってかきまぜて酸素と結合をはかった状態です。
堀川では、潮の干満によって水が大きく動きますので、このときに
撹拌が起こるのではないかと事務局では考えています。
つまり堀川では雨が降って汚濁物質である有機物が流入して、
それを分解するために酸素が消費されて酸欠の状態になり、
その状態で硫酸還元細菌が活動を始め、海水に含まれる硫酸イオンから
硫化物を作って卵のくさったようなにおいを発生させる。
それが潮の干満によって撹拌されて酸素と結合し、コロイド状の
硫黄になることによって白濁する。
それによって堀川の色が淡い色に見える。
もっといえば、硫化物が硫黄にかわり白濁が進んでゆくにつれ、
硫化物自体は減ってゆくとすれば、堀川のにおいもだんだん消えて
ゆくのではないか。
こういう説明ができるのではないかと仮説をたててみたわけです。
今日のペットボトルの実験は、卵の腐ったようなにおいのする硫化物が、
撹拌されることによって白濁する現象、メカニズムを再現しようとするものです。
こうしたメカニズムが、気温が高いこと、雨が少ないこと、日照時間が
長いことという気象条件と、本当に関係があるのかどうか、今の段階では
言い切ることはできませんが、これから先の皆さんの調査データの蓄積により、
いつの日か証明される日がくるかもしれません。
そういう意味で、この第15ステージは、非常に大きな意義のある
ステージになったと思うわけです。
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次にヘドロの色はなぜ黒いのか? という話です。
この説明を試みたのが、60ページの説明です。
堀川の川底では、無酸素に近い状態で、硫化物と鉄分が混在して
います。
この硫化物と鉄分が結びつくと、硫化鉄ができます。
この硫化鉄が黒い色をしているため、堀川の汚泥が黒くなっている
のではないかと考えています。
先ほどの休憩時間にヘドロをさわってにおいをかいでみて、、
なんとなく鉄のような金臭いにおいを感じた人はおられますか?
(数人から手があがった)
やはりおみえになりますね。
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最後に堀川でよく見られる灰緑色や、淡い灰緑色について
説明を試みたのが57ページになります。
堀川の色の3原色といっていいかどうかわかりませんが、
ひとつはヘドロの黒い色、ひとつは貧酸素状態(青潮)のときのような
白濁したような緑色、ひとつは、植物プランクトンが増えた時の赤い色、
この黒と白っぽい緑と赤を透過率を変えて混ぜてみると、
まさしく灰緑色、淡い灰黄緑色になります。
巻き上がったヘドロの影響を強く受ければ黒っぽい色に見えますし、
貧酸素状態で硫化物が多ければ白っぽく見えます。
堀川の色を見ると堀川の状態がわかり説明ができる、という段階に、
私たちは少しずつ近づいてきていると思いますし、これはとてもすごいこと
なのではないでしょうか。
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あと、これまでにも報告したことがあると思いますが、62ページから
65ページまでは、堀川に魚が死んで浮く現象は、毎年4月から6月にかけて、
大潮のころにまとまった雨がふったときに多い、ということを記録したものです。
以前にもお話したことがありますし、今日は時間の関係で深くふれませんが、
その記録を今年も続けていますので、いつかまた、魚が浮くメカニズムの
仮説をきちっと説明できる日がくるのではないかと考えています。
以上で、今回の市民調査の報告を終わります。
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