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今日のご報告のポイントについて最初にご説明します。
まずは連絡事項から。
1.次回の調査隊会議は、平成29年2月18日(土)に
13:30から名古屋都市センターで開催します。
1. 来年度の春の大潮一斉調査を、平成29年4月28日(金)に実施します。
可能な方は是非ご参加ください。
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今日のお話のポイントは次の通りです。
今回のステージ(4月〜6月)は南からの暖かい空気が流れ込み、
第1ステージ以降で最も気温が高くなりました。
また短い周期でまとまった雨が良く降り、特に4月の降水量は
第1ステージ以降で最も多くなりました。
この気温の高かったこと、短い周期でまとまった雨が繰り返したこと
そういう堀川にとって非常に過酷な条件の中で、総じて堀川をみた
皆さんの印象は昨年より悪くなりました。
しかし一方では、今年も納屋橋あたりでもボラの幼魚の大群がみられ、
鳥の中でも食物連鎖の頂点に位置づけられるハイタカなどが確認され
生態系の多様化が実感できるようになり、こうした生き物の様子から、
短期的には気象条件の影響を受けながらも、長期的には徐々に堀川の状況が
改善に向かっているように思われます。
こうした堀川の改善は、名古屋市の施策、すなわち合流式下水道の改善事業や
地下水など導入など様々な効果が複合的に現われていると考えられ、それらの
策が実施されている上流部から徐々に堀川の状態がよくなってきていることが
皆さんの調査データから確認できることを今日ご報告したいと思います。
それから今回新たにわかったこととして、次の事をご報告いたします。
1.今まで堀川で魚が大量死するのは、春先の大潮とまとまった雨が
重なった時が多い、ということがわかってきていましたが、今回あらたに、
春先の小潮など潮位の変化の小さい時と雨が重なった時にも、
魚が大量死するという仮説が立てられるのではないか。
2.堀川では前日に雨が降ると、朝日橋を境にして、中下流部では
次の日の堀川の状態が悪くなっているのですが、上流部では
雨の日の翌日に堀川の状態がかえって改善しているという、
正反対の現象が見られることがデータの分析で説明できるように
なったこと。
3.春の大潮一斉調査でわかったことですが、堀川では、川幅が
急に変わる住吉橋を境にして、それより上流側では大潮の時にきたない
という印象が強くなるのに対して、住吉橋より下流ではむしろきれいと
感じる報告もあるように、住吉橋を境にして印象が違うこと。
4.同じく春の大潮の日には、中流部で浮遊するごみが、松重閘門と中橋付近
を行き来して様子が確認されました。
中下流部でも御陵橋や熱田記念橋付近で、ごみが遡上しているのが
確認されましたが、それがどのあたりからのぼってきているのかまでは
今回は確認できていません。
ひょっとしたら宮の渡しあたりとの間を往復しているのかもしれないので、
これから注目していただければと思います。
5. ヘドロに砂をかぶせる実験ですがほぼ1年半たちました。
生き物が増えている様子はすでにご報告していますが、砂の上にヘドロが
たまりやすいところとそうでないところがありそうだということがわかってきました。
今後のヒントが隠されているかもしれません。
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それでは、資料に沿って、ひとつずつご説明させていただきます。
まず、5ページをご覧ください。
先ほど来、ご紹介していますように8月1日、堀川1000人調査隊の
皆さんの活動が、国土交通大臣から、本年度の水資源功績者として
表彰されました。
今年は全国で9団体だけですから、ものすごく名誉なことだと思います。
5ページの右側中ほどに、何が評価されたのかという説明があります。
ちょっと読みます。
功績内容
行政(つまり名古屋市)の浄化施策を市民が調査・検証し、
行政と共有・評価した結果を、浄化施策に反映させ、さらにまた
市民が調査をする官民協働による活動サイクルを確立しました。
このような活動の成果が、下水処理場の新しいろ過施設の導入や、
浄化の実験などに反映されています。
その他、木曽三川の上流域の住民と名古屋市民の上下流交流、
浄化美化、実験活動、清掃活動、啓発活動に継続的に取り組んで
います。
わたしたちが日常的にごく当たり前にやってきていることが、
全国的に見ても極めて珍しく有意義な活動であることを、
国レベルで評価されたということに、ぜひ皆さん誇りと自信を
持っていただきたいと思います。
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なお6ページにありますように、表彰式の翌日、河村市長にご報告に
あがりましたが、そのことが中日新聞、朝日新聞に大きく取り上げられ
ましたので、一般の名古屋市民の間にも大きなPRになったと思います。
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次に12ページをご覧ください。
皆さんに調査・報告いただいているデータ数は、毎年約400件のペースを
維持しており、今年6月末までの累計件数は4,348件に上ります。
このビッグデータともいえるデータを、様々な形で切り出して
処理することによって、今回も新しい発見がたくさん出てきました。
データの蓄積と新しい着眼点で堀川の実態を解明し説明してゆくことで、
真に効果のある浄化策に結び付けていただき、少しでも早く堀川を
きれいにしてほしいわけです。
皆さん一人一人の集められるデータは決して多くはなくても、みんなの力が
あわさるとすごいことになってきていることがわかります。
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次に17ページをご覧ください。
ここから28ページまでに、先ほど私が申し上げた本日の報告のポイントが
まとめてありますので、あとから思い出していただきながら、ゆっくり
読んでいただければと思いますので、ぜひしるしを付けておいてください。
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29ページからは、気象条件について書いてあります。
今回の19ステージの大切なポイントです。
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32ページの下のグラフをご覧ください。
下のグラフが今回の19ステージです。
オレンジ色の折れ線グラフは気温の推移、上から降りている青い線は
降水量です。
横軸は左から4月5月6月と進んでいきます。
今年の特徴が、赤い字で書いてあります。高温+短い周期のまとまった雨。
青いグラフを見てください。
13ステージ15ステージ、17ステージと比べて、短い周期でまとまった雨が
何回も繰り返し降っていることがよくわかります。
気温も降水量も、第1ステージからの通算で過去最高を記録しており、
堀川にとって最も過酷な気象条件だったことがよくわかります。 |
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それではまず、今年の堀川の、皆さんがみた印象についてご説明します。
33ページの色のついたグラフをご覧ください。
このグラフは縦軸に沿って、上から下へ向かって上流から下流になります。
横軸は時間軸です。左が9年前の第1ステージで右に向かって
第2、第3と進み右端が今回の第19ステージです。
青い色は、皆さんの印象が良かったことを現し、赤っぽくなると
印象が悪かったことを示しています。
左から右に向かって、そして上流から下流に向かって、少しずつ
青い部分が増えていることがわかりますが、今回の19ステージでは、
さっき申し上げた過酷な気象条件の中で特に中流部を中心に印象が
悪化していることがよくわかります。 |
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35ページをご覧ください。
これは、皆さんが「今日の堀川は汚くはない」 つまり
「きれい〜ややきれい〜どちらともいえない」と評価したときの割合を、
一番左の第1ステージから一番右の第19ステージまで棒グラフに
したものです。
オレンジ色は4月〜6月の春・夏のデータ、青は9月〜12月の
秋から冬のデータです。
皆さんが評価した堀川の印象は、第7ステージに木曽川の導水が停止
していったんは悪化したものの名古屋市の様々な施策の実施に伴って
徐々に改善していることがわかります。
ただし、昨年の第17ステージは、10回堀川に行ったら、4回は
汚く感じていなかった(つまり、まあ許せる)のが、今年は10回中2.5回
しかなかった、つまり10回中7〜8回は、汚いなあと感じてしまっていた
ことがわかります。
長期的には改善傾向にある堀川ですが、今年は気象の影響を受けて
状態が悪くなっていることがよくわかります。
来年以降、どうなるのか、本当に長期的に見てよくなっていっているのか
どうか、そういう目でこれから堀川をみていただきたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いします。 |
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36ページをご覧ください。
これは35ページのグラフを区間別にみたものです。
左上が城北橋より上流、その下が城北橋から朝日橋、右上が
朝日橋〜松重橋、その下が松重橋から大瀬子橋と、順に下流に
向かっています。
特徴的なことは城北橋より上流では、今年の気象条件にも関わらず、
印象がかえってよくなっていることです。
ここでひとつコメントさせていただきますが、左下のグラフには
中土戸橋などで調査したデータになりますが、0件となっているのは
なぜか?という疑問が出るのではないかと思います。
これは、今年も実際に9件の調査データを中土戸橋で報告いただいて
いるのですが、いずれも前日が雨ということでした。
前日が雨の場合、水質に明らかに影響を及ぼすことが考えられるので、
この分析では、第1ステージからずっとですが、統計処理上、
前日に雨のデータを全区間ではずして比較をしています。
それで、中土戸橋のデータがこの分析では反映されていない、ということ
であって、報告されたデータがなかったというわけではありませんので
ご注意ください。
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それでは、「なあんだ、前の日が雨だったら、調査しても切り捨てられて
意味がないのか、じゃ、やめだ」と思われるかもしれませんが、そうではない
というお話をこれからさせていただきます。
今回のように短い周期でまとまった雨が降ると、逆に前日が雨だった場合の
堀川はいったいどうなっているのか、という観点で分析してみたらどうなるのか、
ということに事務局では興味がわきました。
そうすると、過去に統計から外されていたデータすべてに光があたることに
なります。
39ページのグラフをご覧ください。
このグラフは、左側が下流、右に行くにしたがって上流になります。
区間ごとに、左側のグラフが前日、当日ともに雨が降っていない状態、
右側のグラフが前日は雨、当日は雨が降っていないデータを抜き出して
比較したものです。
色で見ると、青いのは「きたない」と評価したもの、ピンクは「ややきたない」
と評価したものです。
「きたない」+「ややきたない」を足したものが赤い数字です。
これを見ると面白いことに気がつきます。
朝日橋を境にして、左側つまり下流側では、前の日に雨が降ると
次の日は堀川の印象が悪くなっています。
それに対して、朝日橋より右、つまり上流のほうは、前の日に雨が降ると
次の日はむしろ印象がよくなっているのです。
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また40ページをご覧ください。
そのときに堀川を評価した理由です。
一番下のグレーは「色」で評価、黄色は、「におい」で評価した割合です。
これをみると、前日に雨が降ると堀川全域で、「におい」による評価が増えて、
「色」による評価が減っていることがわかります。
また、城北橋より下流では「ごみ」による評価が増えています。
つまり堀川は、前の日に雨が降ると、特に朝日橋より下流では汚い印象に
なる、それは悪臭が増え、ごみが増えるからだという説明が成り立つことに
なります。
また一方で、城北橋より上流では特に特徴的ですが、青い部分、
これは「透明感」を示していますが前の日に雨が降ると、城北橋より
上流ではきれいな印象になる、それは透明感が増したからだ、という
説明がなりたつことになります。
この原因については、いろいろなことが考えられます。
たとえば、堀川右岸滞水池ができてからは、その直接的な効果がある
上流部では、雨水吐から、下水の未処理水つまり汚い水とゴミがあまり
流入しなくなったはずです。
それに対し、堀川右岸滞水池の直接的な効果があまりない朝日橋より
下流では相変わらず雨水吐から汚い水がでてしまうからではないか?
上流部では雨水による希釈効果が働くが、中下流部では雨水の流入で
流れが早くなりヘドロを攪拌してしまうからではないか?
上流部はその点川幅も狭く、ヘドロの堆積が少なく雨水の攪拌による
悪影響が少ないのではないか?、というようなことが考えられるわけです。
また41ページに前回の調査隊会議で報告した資料がつけてありますが
上流部では水位が低くなると透明感を感じやすいという現象も確認されて
いることから、そういう潮が低い時のデータも反映されている可能性もあります。
これについては、のちほど実際に調査されている皆さんに、それが実感
としてそのとおりなのか、それとも実際の印象とは違っているのか、ぜひ
お聞きしてみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
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43ページから48ページまでは透視度についてまとめてあります。
43ページをご覧ください。
これまでのデータ分析で、調査隊の皆さんが堀川が「汚くはない」と
感じたときの透視度は70cm以上であることがすでにわかっています。
つまり私たち市民が許容できる、許せる堀川の透視度のボーダーライは
70cmだということが説明してあります。
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46ページをご覧ください。
先ほど堀川の「水の汚れの印象」を見たときは、かなり数値が
下がっていました。42%から25%。
ところが、透視度調査で見ると、確かに数値は5cmほど下がって
いますが、それほど大きく変化したとはいえません。
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47ページで区間別に見ても、松重橋より下流では少し数値が
下がっていますが、いずれの区間もそれほど劇的にグラフは
下がっていません。
これはどういうことかと考えると、46ページの下の文章の最後
のところに書いてありますが、調査隊の皆さんは主に堀川の表層の
淡水を採水して計測していると思うのですが、雨による流れの速さで
ヘドロを攪拌したりする影響は、表層水には表れていないのかも
しれません。
雨が降ると堀川は雨水吐からの汚濁水の流入や、ヘドロの攪拌で
においがするようになり、色も汚くなって印象が悪くなるのですが、
表層の水に関しては透視度はそれほど悪化していないのではないか、
そういう姿が浮かび上がってきます。
堀川の水が、下のほうの比重の重い海水と、表層の比較的軽い淡水
の2重構造になっていることが影響している可能性があります。
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42ページに、第18ステージで報告した資料がつけてありますが、
透視度(特に表層水)が改善すると水際や川底が見えてくるため、
水の汚れの印象(特に透明感、色)に変化があらわれるのではないか
と仮説を立てています。
今後も透視度の変化と水の汚れの印象の変化に着目していきたいと
考えているところです。 |
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48ページをご覧ください。
これは、前日が雨でないときがピンクのグラフ、前日が雨の時が
青いグラフ、で透視度を現しています。
全区間で雨が降ると透視度が悪くなっていますが、特に
城北橋〜朝日橋〜松重橋の町の中心部で、前日が雨だと
透視度が特に悪くなっていることがわかります。
これは、このあたりのヘドロがまだたくさん残っていて、
雨によって攪拌され、水が濁ってしまうのではないかとも
想像できるのですが、これから解明していかなければいけない
課題です。
特に、堀川を活用した街づくりや観光都市をめざしてゆこう
という名古屋にとって、街の真ん中で雨が降ると堀川がくさくて
色が悪くて、きたなくて、透明感もない、というのでは話にならない、
って私なんか思うのですが、いかがでしょうか。 |
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49ページから54ページには、CODについてまとめて
あります。
50ページを見ていただくと、今年は若干悪くなっているものの、
傾向として上流から少しずつ改善の傾向にあることがわかるかと
思います。
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52ページ、53ページをみていただくと、透視度の時と
同じように、調査隊の観測は表層水をみているので、
「水の汚れの印象」ほど、「透視度」も「COD」も、
著しく悪化はしていないことがわかります。 |
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また54ページを見ると、前日が雨のとき、城北橋より上流では、
CODはほかの区間と反対に、雨が降ったほうがよくなっています。
先ほど48ページの透視度ではこの区間も雨が降ると悪くなって
いますがCODに希釈効果が働くのか、あるいは庄内川の水質の影響を
受けるのかわかりませんが、CODは雨の後のがよい、という統計結果
になっていて興味深いです。 |
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55ページから66ページまでは、「あわ」と「におい」
についてまとめてあります。
ここでは時間の関係でポイントだけ説明させていただきます。
61ページ右側のグラフをご覧ください。
川底からのあわと、臭いの発生には強い相関関係があることが、
すでに私たちの調査でわかっています。
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65ページ右上のグラフをご覧ください。
今年19ステージの堀川は、高温と、短い周期のまとまった雨で、
くさい臭いがして汚い川であったこと、特ににおいについては、
朝日橋〜松重橋の間、つまり中区、西区中村区、中川区といった
町の中心部で数値が悪かったことがわかります。
この場所は海からの海水があがってきて、汽水域の中でも
潮の先端になりやすい場所であることがわかってきています。
こうした潮の先端は、ヘドロのたまりやすい場所である、
という論文があります。
それが60ページに紹介してあります。
まさに理論通りの事が堀川で起きている、ということなんです。
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67ページからは色についてまとめてあります。
67ページ右上をご覧ください。
これまでの調査で、堀川には3つのパターンが組み合わさって
いろんな色になることがわかっています。
そのうちのひとつは、「白濁系」の色です。
これは堀川が酸素が少ない状態になったときに発生する色で
主に海水に含まれる硫酸イオンが川底の細菌によって還元されて
生成された硫化物(硫化水素等)が酸素と触れた時にコロイド状の
粒子状硫黄になることで発生します。
ちょうど白っぽい温泉のような色で、卵の腐ったような独特のイオウ臭
がします。
もうひとつは「ヘドロ系」の黒っぽい色です。
潮の流れや雨水の流入でヘドロが巻き上げられ、攪拌されたときに
見られます。
もう一つが「赤潮系」の色で、水中にプランクトンが異常発生したような
ときにみられます。
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70ページをご覧ください。
今回、前日に雨がふったときと、そうでないときの、皆さんが調べた
堀川の色を比べてみました。
すると、前日に雨が降ると堀川では、白濁系、つまり酸素の少ない時の
色が多くみられることがわかりました。
それも大潮のように流れのはやい時には、白濁系の色が発生していることが
多いようです。
小潮の時と比べると、堀川では雨が降ると大潮の時のほうが白濁することが
多いようです。 |
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これに関連してちょっと話が飛びますが、82ページをご覧ください。
以前の調査隊会議で、堀川では大潮と、その直前にまとまった雨が降ると
特に4月〜6月に酸素が不足する水質になって、魚が大量死するのではないか、
という、私たち事務局がたてた仮説をご紹介しました。
この表は、上のほうから下のほうに、平成22年から今年28年にかけて
新聞や名古屋市で公開された堀川で死魚が発生したときとその時の潮廻り、
気象条件などについてまとめたものです。
一番下の今年の欄をご覧いただくと分かりますが、今年は大潮では
ありませんでした。
原因の欄の「DO低下」というDOは水中の溶存酸素の事です。
この表を見ると魚が死んでいるときには直前にまとまった雨が降っている
ことはまちがいありませんが、大潮だけでもないことがわかります。
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84ページの写真をご覧ください。
左上は大潮のときの上げ潮時間帯の様子で、早い流れがヘドロをまき上げ
攪拌している様子がわかります。
右上は満潮になったときです。
向う側が、海から上がってきた酸素の少ない白濁した水で、手前側が
上流から流れてきた庄内川の水や名城水処理センターからの淡水です。
ふだんは、海水は重いので淡水の下に潜り込むように上ってくるので、
水面でその境目はほとんどわかりません。
しかし大潮の時は一気に水があがってくるので、垂直に遡上して
上流からの水とぶつかりあうので、こういう潮目のような境が見られます。
左下は、干潮時間帯になって水が下がり、ヘドロが露出した状態、
右下は、水面が下がって水圧が低下したためにヘドロの中の
硫化水素ガスなどが水面にのぼってきて泡をたてている様子で、
当然、卵の腐ったようなにおいがしているはずです。
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これをみると、魚が死んでもしょうかがないかな、ということで立てた
仮説が83ページの図です。
気温が上昇する4月〜6月、有機物の分解が活性化し、水中の酸素が
消費されやすくなる中で、まとまった雨が降ると雨水吐から汚濁物質が
堀川に流れ込み、それを分解することで、ますます酸素が消費されて
少なくなる、そうしたところに大潮が重なると非常に魚が死んでしまいやすい
状態になるのではないか、これが私たちがいままで立ててきた仮説で、
82ページの表を見る限り、かなりあたっているのではないかと思ってきました。
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しかし今回もうひとつの新たな仮説を追加してみました。
それが85ページです。
小潮・長潮、若潮という言葉がありますが、長潮というのは、
小潮の末期、最後のほうで干満差が一段と小さくなって
非常に堀川の流れが緩やかになるときです。
若潮というのは、その長潮のつぎにくる潮で、長潮を境に大潮に向かって
潮の干満差が次第に大きくなっていきますが、このように潮が再び大きく
なる状態を「潮が若返る」と言って、長潮の翌日を「若潮」とよんでいるのだ
そうです。
いずれにしても小潮、長潮、若潮のときは、潮の干満差による堀川の流れは
非常に緩くなります。
そうすると堀川の水の入れ替わりが少なくなり、気温が上がって
酸素が消費されやすいところに、雨が降って、あらたな汚濁物質が流れ
込んで貧酸素かが進む中で、水は入れ替わらないので、水中の酸素が
極めて少ない状態になる、だから魚が死んでしまいやすくなる、
これが事務局が今回新たに立てた仮説です。
今後、こうした目で皆さんも堀川を見つめていっていただき、
いろいろな現象が見られたら写真などを送っていただくと
ありがたいと思います。
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それにしても、魚がそれだけ死ぬということは、逆に言うと
堀川にはそれだけ魚がいるということになります。
78ページからは、堀川の生き物についてまとめてあります。
78ページの左上をご覧ください。
堀川では、毎年ハゼの仲間やボラの稚魚が遡上しているのが
確認されており、すごい時は納屋橋あたりでも水面一面がさざ波だって、
あれは何だ、というくらいボラの大群がいるときがあります。
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79ページをご覧ください。
そうした魚類を狙って食物連鎖が始まり、生態系の上位に位置する
猛禽類とよばれる鳥も、名古屋の中心市街地でよくみかけるように
なりました。
堀川が徐々に状態がよくなってきていることを示す事実として、
こうした生き物の観察はとても重要な指標になってきています。
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次に4月8日に実施していただいた、春の大潮一斉調査についての
ご報告です。
91ページから106ページにまとめてありますが、92ページをご覧
いただくとこの日の潮位差は、約2.5mあり、非常に干満差が
大きかったことがわかります。
もう一つの特徴ですが、93ページをご覧ください。
この一斉調査の前日には、40.5mmのまとまった雨が降りました。
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94ページをご覧ください。
雨の降った後、4月の平均気温を上回って調査当日気温が上昇したことが
わかります。
今回の一斉調査にはこの影響も出ていると考えられます。
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たとえば、それは、102ページの表の真ん中あたりをご覧ください。
この表は各地点で皆さんが観察した堀川の色を示したものですが、
真ん中あたりの吹き出しに、「干潮時間帯の水の動きが止まった時に
灰色が強い白濁になりました」と書いてあります。
つまりこのとき堀川は、一気に貧酸素の状態になったということです。
しかも、その1時間後には、色が変わってしまったことも記録されています。
干潮で水位が最も低くなり、潮の動きが止まった時に一気に白濁して、
潮が動き出したらすぐに白濁が消えてしまった、
こういう事実が記録されたことは、堀川の色々な現象を考えてゆくのに
大きなヒントになったと思います。
なぜこうなったのか、これについては、まだはっきり説明できませんが、
非常に貴重なデータが得られたことは事実です。
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この大潮の日の一斉調査で確認できたことが、もうふたつあります。
96ページをご覧ください。
今回の一斉調査では、住吉橋を境にしてその上流と下流で
結果に違いが見られました。
住吉橋の上流はご存じの方も多いと思いますが、川幅がきゅっと
狭くなっています。
地形的な要素が堀川に影響を及ぼすのではないか、そういう見方が
できるかもしれないことがわかってきました。
この日、住吉橋の上流では、きたないと感じた人がほとんどで、
その多くは色で評価していました。
干潮に近い下げ潮時間帯には、ヘドロが巻き上がり、水の色が
濃い灰色になりました。
干潮時間帯、つまり水の動きがなくなったときには、あわと
卵の腐ったにおいと、白濁の発生が確認されました。
水圧が低下して、底の泥で生成された硫化物が、水中に解放された
と考えられます。
この日の前日は、40mm以上のまとまった雨が降りました。
雨と、雨が降った翌日に白濁が生じる現象の関係を考える
手掛かりになる知見が得られました。
一方、住吉橋の下流側は、比較的よい印象が報告されました。
これも現段階では想像に過ぎませんが、たとえば川幅が広くなって
水のスピードが緩くなり、ヘドロを巻き上げにくいのではないかとか、
この辺りはある程度ヘドロの浚渫が終わっているので、
その効果がでているのではないか、といったことも考えられるかと
思います。
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もうひとつ春の大潮一斉調査で確認されたのは、ごみの動きです。
97ページ右側をご覧ください。
潮が下がってゆくときに、松重閘門の、へこんでいるところに
ごみが集積するのが確認されました。
98ページをご覧ください。
上げ潮時間帯になると、そのごみが錦橋から中橋付近まで遡上
していきました。
一旦水面にごみが落ちると、そのごみは堀川を行ったり来たりするので、
ごみで堀川の印象が悪くなる、ということが改めて確認できました。
またごみが集まらない仕組み、あるいは集まったごみを上手に取る仕組み
を考えるための重要な知見が得られました。
また住吉橋の下流の、御陵橋や熱田記念橋でも、上げ潮時間帯に
浮遊しているごみが確認されました。
このごみがどこから来ているのかはまだわかりませんが、たとえば、
ひょっとしたら、宮の渡しあたりとの間で往復している可能性もあります。
この辺りで調査されている方はそういう点でも観察して報告を
いただけるとありがたいです。
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次に、覆砂による社会実験のその後についてのご報告です。
資料の107ページをご覧ください。
実験開始した昨年の2月と1年たった今年2月の写真が比較してあります。
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108ページをご覧ください。
これは昨年の夏と今年の夏(8月3日)の写真を比較したものです。
写真は中橋から上流つまり北側の五条橋方向を撮影したものです。
露出した砂や石炭灰がやや黒ずんでいることがわかるかと思います。
一年前には、砂で覆った場所と、石炭灰という浄化材で覆った場所の
分かれ目、境がなんとなくわかりますが、今年の写真ではちょっと
わかりにくくなっています。
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110ページは、逆に五条橋から下流側つまり南を向いて撮影した写真で、
昨年の夏と今年の夏(8月3日)を比較したものです。
昨年は、砂と石炭灰の境がくっきりみえていましたが、今年はやや
わかりにくくなっています。
私たちは、実験のはじまるとき、砂や浄化材をかぶせても、すぐに
上からヘドロがかぶさって真っ黒けになってしまったり、洪水で
砂が流されてしまったりするのではないか、ということを心配して
いました。
今のところ、大きな台風による出水などがなかったこともあって、
砂や浄化材はそのまま残っていて、一年たった今、
多少黒っぽくなってきてはいるけれども、ヘドロがまともに露出して
いた時のような状態と比べると全然違うということがわかるかと思います。
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111ページをご覧ください。
今回わかったことですが、同じように砂をかぶせても、岸に近いところ、
少し高いところにはヘドロがたまりにくく、少しでもへっこんでいるところには
ヘドロがたまりやすいということがわかりました。
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砂と石炭灰では、どちらがヘドロがたまりやすいかはとても微妙で、
まだ結論を出すには早いかと思いますが、現時点では112ページ、
113ページの写真を見ると、砂のほうがたまりにくいかな?というようにも
みえます。
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ただ、116ページをご覧ください。
白抜きの文字で書いてありますが、カモがエサを探している場所は
砂だけをかぶせた場所よりも浄化材(石炭灰)をかぶせた場所のほうが多く、
どうも浄化材のほうに餌がたくさんあるように思われます。 |
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117ページから121ページには、この実験をする前とその後の
皆さんの観察データがプロットしてあります。
このデータからは、実験区間では、実験前と比べて水の汚れの印象が
ちょっとよくなったかな、透視度がややよくなったかな、CODがやや改善
したかなという傾向が少し見られますが、今年の気象条件が悪かったために、
はっきりと言い切るだけのデータにはまだなっていません。
もう少し長い目で見てゆく必要があると思います。
ただ、生き物のようすなどの観察から、この実験は間違いなく効果が
でている、ということは言えるのではないかと考えています。 |
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最後に新堀川の様子についてご報告します。
87ページをご覧ください。
まだまだ堀川と違ってデータ数の蓄積が少ないため、
いろいろなことを言い切るところまではいきませんが
これまでのデータで、新堀川は最上流部の舞鶴橋から
法螺貝橋付近が特に印象が悪いようです。
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88ページをご覧ください。
CODについても上流へ行くほど悪くなっています。
透視度については、大井橋と熱田橋付近の透視度が低くなっています。
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89ページを見ると上流部ではあわも多くみられ、臭いの状態も悪くなっています。
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90ページをご覧ください。
臭いの種類はヘドロのにおい、卵の腐ったにおいが多く、色も上流部では貧酸素状態を示す白濁系の色が多くなっています。
新堀川については、なんとかしなくっちゃ、といいながら、なかなか見通しやめどがついていないというのが現状ではないかと思いますが、名古屋の町中を流れる大切な川であり、堀川の浄化とも密接な関係があると思いますので、このあたりについても皆さんのご意見をお聞きしたいと思います。 |
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以上で、19ステージに皆さんが定点観測をしていただいた調査報告を終わります。 |